ディスカバーブルーでは2011年の設立以降、主として下記のような事業を実施しています。
- 真鶴町における「海を学び、海に親しむ場づくり」
- 各種講演依頼、イベント開催依頼、研修依頼等
- 教育旅行の受け入れ
- 学校等への出前授業
- 冊子、ガイド、オリジナルグッズ等の制作
- 沿岸域生態系科学調査
- 各種調査及び支援の受託
1. 真鶴町における「海を学び、海に親しむ場づくり」
真鶴町は神奈川県西部に位置する人口6,000人前後の小さな海辺の町で、真鶴半島は豊かな海の生物層に恵まれています。ディスカバーブルーでは2011年の設立の直後に真鶴町とともに神奈川県によるNPOと自治体の協働モデル事業に採択されて以来、真鶴町における「海を学び、海に親しむ場づくり」の核となる海の学校授業の受託をはじめとして、外部資金獲得のための企画立案とそれを元にした事業を受託し実施するなど協働関係を継続しています。
海の学校
真鶴町立遠藤貝類博物館が2006年から実施する事業で、真鶴町及び湯河原町の小中学校、遠足が校外学習で真鶴町を訪れる神奈川県内を中心とした主に公立の小中学校を対象として、磯の生物観察やプランクトン観察などを実施しています。ふだん触れる機会の少ない海の生物多様性を実感する機会を提供しています。ディスカバーブルーでは2011年、2012年の神奈川県のモデル事業に真鶴町とともに採択されて以降、本事業を受託しています(2013年以降は真鶴町の独自財源)。例年30団体以上1,500人前後を対象として実施しています。

磯での生物さがし

見つかった生物の解説
海の学校機能強化
2019年度から船の科学館「ミュージアムサポート」の助成(真鶴町立遠藤貝類博物館が申請・採択、ディスカバーブルー企画・立案及び再委託先)を得て、海での一度きりの体験活動ではなくより深い「海の学び」を提供することを目的として、真鶴町の海の学校利用校に訪問して事前・事後授業を行い、真鶴や相模湾の豊かな海の生物の紹介、海の生態系の基礎、陸と海との関わりや海の環境問題などについての理解増進を図りました。各学校で行われる総合や理科の授業などに対応しています。また、町立遠藤貝類博物館内で展示物を作成し、環境問題や海水温上昇に伴い出現したサンゴの解説など、現在進行中の海洋問題などの学習機会も創出しました。2024年は28回1,654名に対し実施しました。なお、2025年度からはディスカバーブルーが独自で助成金を獲得し、対象範囲・地域を広げた上で実施しています。(後述)

出前授業の様子

真鶴町立遠藤貝類博物館内の展示物
一般向けイベント「海のミュージアム」
現在の日本では海の生物や生態系についてきちんと学ぶ機会は多くありません。そこで、「海に親しみ、海を学び機会」を創出するためにディスカバーブルーでは一般向けのイベントも開催しています。2011年にモデル事業に採択されたのち、2013年からディスカバーブルーが主催、真鶴町立遠藤貝類博物館が共催という形で有料の一般向けイベント「海のミュージアム」として、「磯の生物観察会」と「海の自然実感教室」を3月から9月頃に開催しています。「磯の生物観察会」では、真鶴町立遠藤貝類博物館で相模湾や真鶴の海のレクチャーを行ったのち真鶴半島先端の三ツ石海岸で磯の生物を探し、見つかった生物や磯の生物多様性などの解説を行なっています。さらに、引き続いて開催する「海の自然実感教室」では磯では見ることのできない生物に関するレクチャー、海の生態系を支えるプランクトンの顕微鏡観察、さらに海と陸のつながりや海の環境問題についてレクチャーし、海の自然を実感するだけではなく自分たちの生活とのつながりを認知し、日常生活の変容を促し海の環境保全に資する機会を創出しています。例年、のべ20回程度400〜500名程度の方にご参加いただいております。
2025年シーズンからは横浜銀行さまに協賛いただき、「海のミュージアム supported by 横浜銀行」として、より充実したイベントを開催しています。

「海のミュージアム supported by 横浜銀行」のチラシ

磯の生物観察の様子

顕微鏡で観察したプランクトン
海を活かした地域振興
気軽に楽しめる春から夏の生物観察以外にも海の楽しみ方はいろいろあります。特に秋から冬の海の楽しみを体験していただくために、閑散期の「海のミュージアム」として「ひものづくり体験とプランクトン観察」、漂着物から海や周辺の陸地と人の営みを知る「ビーチコーミング」、神奈川県の天然記念物にも指定されている真鶴半島照葉樹林等を紹介する「真鶴半島ネイチャーウォーク」などを開催しています。2023年度まで船の科学館「ミュージアムサポート」事業などの各種助成を得てモデル事業として実施し、2024年度からは真鶴町の独自財源で受託し、「海まちラボ 海さんぽ」として開催しています。

ひものづくり体験(協力:真鶴町漁協)

ビーチコーミング(漂着物集め)

真鶴半島ネイチャーウォーク
海辺の利用ルールづくり
真鶴町においても特にコロナ禍以降、一般市民による多様な海洋利用が進む中で環境保全や事故防止等のため、海辺の利用ルールの必要性が高かまりました。そこで、2021年度から3年間船の科学館「ミュージアムサポート」の助成(真鶴町立遠藤貝類博物館が申請・採択、ディスカバーブルー企画・立案及び再委託先)を得て、海辺の利用ルールの策定に向けて議論を重ねました。2011年度から定期的に開催している「海を学び、海に親しむ」場づくり協議会の参画メンバである、真鶴町役場、真鶴町漁業協同組合、岩漁業協同組合、真鶴町観光協会、横浜国立大学、東京フリーダイビング倶楽部とさまざまな海辺の課題を洗い出し、マナー向上の呼びかけポスターの作成や今後のルールづくりの礎となる「真鶴の海辺の基本的考え方」を策定しました。

「海を学び、海に親しむ」場づくり協議会

マナー向上の呼びかけポスター
地域の海洋リテラシー向上に資する取組み
これまでディスカバーブルーでは、2011-12年の神奈川県のモデル事業に真鶴町とともに採択されて以降、「文部科学省 公民館等を中心とした社会教育活性化支援プログラム」(2013-14年度)、「コミュニティー助成」(2015年度)、「船の科学館ミュージアムサポート事業」(2015-19年度、2021-24年度)等、真鶴町の外部資金の獲得において企画・立案を行い、さらにこれら事業を委託されたことを通して、下記のような地域の海洋リテラシー向上に資する活動を実施してきました。
まなづる自然こどもクラブ
まなづる自然こどもクラブは、 真鶴・湯河原町のこどもを対象とし、普段の生活や遊び、学校の授業の中ではゆっくりと学ぶ機会が少ない地域の自然について、町立遠藤貝類博物館学芸員やディスカバーブルーのスタッフが、野外活動における安全面もサポートしつつ、専門知識にもとづいた解説・指導することで、自分の町の自然の豊かさを体験するものです。(真鶴町独自財源でディスカバーブルーが受託し、現在も継続中)

海中写真展
真鶴町は日本のスキューバダイビングのメッカとして知られ、いまでも多くの方がダイビングに訪れています。ダイビング事業者とダイバーにご協力いただいて真鶴の海中写真を数多くご提供いただき、町立遠藤貝類博物館で海中写真展を開催し、多くの方に真鶴の海や生物たちについて紹介しました。(現在は、真鶴町立遠藤貝類博物館が単独で継続)

海まちラボ 海トーク
2020年度から真鶴町立遠藤貝類博物館主催のイベントとして、ディスカバーブルーが企画調整を行い横浜国立大学臨海環境センター等の協力を得ながら、研究者と一般市民が垣根を超えて海の課題を議論するサイエンスカフェ「海トーク」、研究者や地元漁業者、海に関わるステークホルダーが登壇するシンポジウムを得て実施しました。(2024年度からは横浜国立大学臨海環境センターが主催し、ディスカバーブルが企画調整)

海の月報
町民を対象として、知っているようで知らない真鶴の海の現状を「海の月報」としてまとめ、2018年度から2021年度まで毎月発行しました。2021年度は回覧板として各家庭へ海水温の変化や漁獲、トピックなどタイムリーな情報を発信しました。

SNSによる真鶴の海の自然の発信
既述の「海の月報」よりもさらにタイムリーに、かつ、広く発信することで真鶴町へ来訪を促すために、2015〜21年度「船の科学館ミュージアムサポート助成」の一環としてfacebookで海の見どころや話題を年間20-50回程度発信しました。

生物展示
真鶴町内で開催されるお祭り等で「海の生物観察コーナー」を設置し、普段海の自然と関わりを持たないような町民の方にも、海の生物に興味を持ってもらい、海洋環境保全の意識向上に繋げる機会としました。

2. 各種講演依頼、イベント開催依頼、研修依頼等
ディスカバーブルーではこれまでご依頼に応じて、海の生態系や環境問題に関するさまざまな講演・ワークショプ、プランクトン観察会等のイベント、社員・関係者向けの研修等を各地(北海道〜沖縄)で実施させていただいております。2024年には千葉県で教員向けのプランクトン観察研修、神奈川県内の小学校PTA主催の親子でのプランクトン観察会、神奈川県真鶴町では横浜銀行行員さま及びご家族さま向けの海の生物多様性に関する研修、都内私立中学校の臨海実習、横浜市で開催された「釣りフェスティバル」内で「横浜市 次世代育成事業」として「海辺つくりから地球を考える」と題した講演等、のべ23回992名を対象として実施させていただきました。
3. 教育旅行の受け入れ
都内私立中学校の校外学習、神奈川県内私立小学校の宿泊研修、埼玉県内公立小学校の修学旅行での海の体験学習として旅行会社さまのご依頼のもと、ビーチコーミングや磯の生物観察、プランクトン観察などを行いました。2024年度は7校、のべ772名を受け入れています。

4. 学校等への出前授業
ディスカバーブルーでは2012年から各種助成等を得て、真鶴町の「海の学校」事業利用校へ事前・事後授業、その他県内各地の公立学校へ地域の海の自然を知るための出前授業を行なっています(2013-16年度中央ろうきん助成プログラム、2017-19年度/2021-24年度船の科学館ミュージアムサポート助成での真鶴町からの委託事業、2020年日本財団助成事業)。また、教員向け研修、スクールコミュニティなどの学校関連団体を合わせるとこれまで、218校11,863名を対象として実施してきました。また、2020年度には日本財団助成金を活用し、教員を主な対象として相模湾の情報をまとめた「教える人向け 海の学習ガイド『海で学ぶ』」を作成しました。

茅ヶ崎市で実施した出前授業(2020年度)

鎌倉市で実施した出前授業(2020年度)

教える人向け 海の学習ガイド『海で学ぶ』〜はじめて教える相模湾のいま〜(2020年度作成)
5. 冊子、ガイド、オリジナルグッズ等の制作
受託した事業や助成金を得た事業で、海洋リテラシー向上、海や身近な自然と触れ合うためのガイドブックを作成しています。また、ディスカバーブルーのオリジナルグッズとして「海の生物観察ガイド」や「浮遊生物Tシャツ」を作成し、販売しています。

真鶴町移住者促進事業補助金で作成した「親子で楽しむ まなづる 海あそびガイドブック」

真鶴町からの受託事業で作成した「真鶴半島 自然のみどころマップ」

浮遊生活(プランクトン)Tシャツ【販売物】
6. 沿岸域生態系科学調査
海の生態系はまだ未解明であるとともに、現在、地球温暖化に伴う海水温の上昇などにより、大きく変化が引き起こされています。ディスカバーブルーでは過去、活動を通して確認された生物の情報を(国研)海洋研究開発開発機構が所有する海洋生物の多様性と分布情報のデータベースBISMaL(Biological Information System for Marine Life)にデータを提供してきました。データはここを通じで世界的な海洋生物多様性情報データベースであるUNESCOのOBIS(Ocean Biodiversity Information System)に提供され、人類の知識として蓄積されます。今年度は一般向けイベント「海のミュージアム supported by 横浜銀行」で観察された生物の情報を登録予定です。また、真鶴町では従来はより南に分布していた造礁サンゴの大規模な群集を町立遠藤貝類博物館と2022年3月に確認し、横浜国立大学臨海環境センター等と連携して調査しています。さらに全国的に著しい減少が見られる海藻類についても、海藻おしば協会の協力を得て調査行っています。



7. 各種調査及び支援の受託
ディスカバーブルーでは海の環境や生物多様性の保全、海を活かした地域振興、海洋教育や海洋リテラシーに関する調査や取組に関する支援・調査のご要望にも応じています。これまで民間企業や民間財団から、海洋教育に関する調査、海洋保全に関わるパイロットプロジェクト事業の支援などを受託しています。